明雅屋の感想

京大最寄の自転車屋です。一般車・MTB・油圧系修理が得意です。

MTBのジオメトリーの話から運動連鎖の話まで

ピークアウトと言う言葉は、ここ数年感染者の数や円の値段、原油高と合わさって何度も聞いたワードです。

文脈とは全く関係ありませんが、どうやらMTBの世界でも頭打ちという言葉が出てきたようです。


海外のMTBサイトに、興味深い記事と動画がアップされていました。

Analysis | Have we reached peak MTB geometry? - BikeRadarwww.bikeradar.com

Longer, Lower, Slacker: Have We Reached Peak Geometry? - YouTubeyoutu.be

MTBのジオメトリーはピークに達したのか?

結論から言うと、5年前ごろからロング&スラックなジオメトリーは概ね変わっていないようです。

そして、微調整はあるだろうが5年後もこのジオメトリーはうまく機能すると結論付けています。

後出しじゃんけんですが、数ヶ月前にオリジナルのMTBを作るために色々なメーカーのフレームの変遷を見ているときにある程度同じことは感じていました。

そして今後もリーチが長くなるようであれば、それを補うためにハンドルのバックスィープが深くなると思っていました。が、そうなるとハンドルとのセットになるため販売は現実的ではないようですね。

つまり、Mサイズ(適応165cm~175cm)くらいのフレームなら向こう数年はリーチが440~460mmに留まるだろうというのがこの記事から推測できる今後の展望。

リーチが長くなると、直進安定性が確保され、ハンドルを体が乗り越えるような恐怖が少し減ってきた恩恵を得ることができた反面、ハンドルまでの距離が長くなりバイクコントロールが大雑把になりやすいというデメリットも出てきます。

それを補うために短めのステムを使用するという方法もありますが、バックスィープが

深いハンドルを使用する方法が個人的には合理的だと思っています。

深いバックスィープとは

そもそもバックスィープが深いとはどのくらいを指すのかという問題があります。

一昔前なら7~8°が一般的で、9°と言うのは案外少なかったと思います。そして10°は、、、。

現在市販されているカーボンバーで手に入りやすく比較的バックスィープが深いのは9°。アルミだと10°。アルミだとPNW一択になりますが、入手はしやすいです。

バックスィープが深いハンドルを使うメリット

ショートステムよりも深いバックスィープのハンドルを使うメリットは一つ。

首・肩周りのリラックス感が出やすいからという理由です。

バックスィープが深い方が、手が外側に向かって捻られる方向に働くことがわかると思います。スポーツコンディショニングの世界でスタンダードとなっているJoint by joint Theoryの考え方から言えば、この肢位の向きは胸椎の動きを出しやすいとされています。言い方を換えると、胸椎の動きが出ないと(肩が耳に近づくような姿勢)腰椎(体感幹)の安定感が失われ、股関節の動きが出なくなるというネガティブな運動連鎖になります。体幹の安定感が失われることの多くは、このネガティブな運動連鎖が起因している場合が考えられます。

アスリートのコンディショニングを行っていると、体幹が安定しない、という問題を訴えてくる選手が多いですが、実際のところ体幹に問題があるということより、首・肩周りに緊張があり、隣り合う関節の腰椎(体幹)が弛緩しやすくなっていることが多いのです。

話が逸れてしまっているかもしれません。これでは単なるJ-by-J Theory の説明ですね。

 

つまり、バックスィープが深いハンドルだと肩のリラックス感が出しやすく、体幹の安定感が出やすくなり、股関節も動きやすい姿勢をとることがバックスィープの浅いハンドルと比べると容易になるということです。

 

今後、10°を超える深いバックスィープのハンドルが出てくる気がしますが、少し先の未来の話かもしれません。

なので、現実に手に入るお勧めハンドルを最後に載せておきます。

 

OVERRIDES(旧GLC)ハンドル

GLCカーボンハンドル 9°

meigaya.stores.jp

PNWレンジハンドルKW

PNWハンドル 10°

meigaya.stores.jp