明雅屋の感想

京大最寄の自転車屋です。一般車・MTB・油圧系修理が得意です。

Orange Bikes P7 27.5

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P7 27.5 140mmストローク

フルサスバイクにシェアがずいぶん奪われて、最近めっきり減ってきた感のあるクロモリハードテール。諸外国のライダーからすれば何でいまさらハードテール?と首を傾げられるかもしれませんが、日本国内ではクロモリハードテールは伝統的に人気があります。もちろん今でも。

先日クロモリハードテールが欲しいという相談があり、ORANGEの販売。そして納車ライドの際に少しだけ乗ってみました。

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ヘッド角64° リーチ443mm(Mサイズ)

平地・登り

ヘッド角64°で、リーチが443mmという攻めたジオメトリーのため、降り以外は乗りにくい印象を持っていたのですが、不思議なことに平地や登りも問題なくこなせます。印象としては、街中の舗装路はGIANTエスケープと同じか、それ以上に速く走れる感じです。

降り

ヘッドが寝てリーチが長い、というジオメトリーのため、5年以上前のMTBから乗り換えた場合は降る際やコーナーリングの際にはコツが必要です。

29erが主流になり、29er用のジオメトリーが最適化されるにつれフロントセンターが長くなり、リアセンターが短くなったことで、必然的にバイクのスイートスポットが後ろよりになってきています。

そのため、最近のジオメトリーのバイクでサドルからお尻を浮かせた場合(27.5も含めて)、自分が想像しているよりもお尻を引いて乗ることでようやくバイクのスイートスポットにはまる事になります。

ORANGE P7も上記の理由により、お尻を引いて(背中を後ろに突き出すようにと表現したほうがいいかもしれません)乗ることにより、降りはより安定してアグレッシブに、コーナーは想像以上にスムーズにこなすことが可能です。

フレーム素材

レイノルズ525ということもあり、撓まないソリッドな乗り心地。

数年前にわたくしはTANGEのECCENTRICというフレームを使っていたことがあるのですが、それに比べると撓まない撓らない硬い硬い。でも、振動吸収はするので脚のあるライダーの素材にはちょうどいい。

重量はあるけど、耐久性を重視と思えば悪くない選択肢。

このORANGEを購入された方は、TANGEのECCENTRICを落車で曲げました。たぶんこのフレームならそうはならなかったでしょう。

 

価格

フレーム 162,800円(税込み)

同じレイノルズならJamis の方が絶対安いです。なのでコスパ重視してる人には全く響かないと思います。

ただ、Jamis には到底出せないデザイン性がOrange にはあります。カッコいいから高い。当たり前です。

 

35㎜ハンドルバーについての感想

アクスルがクイックからスルーアクスルになりさらにブーストになったことも、リム幅がここ10年ほどで1.5倍ほど広くなったことも、それに伴いタイヤ幅もワイドになり、ハンドルバーの幅も10㎝ほど広くなったこともすんなり受け入れられたけど、ステムのクランプ径が31.8から35㎜に大口径化する流れはなかなか受け入れられない。

とりあえず、使用してみて自分なりの感想を書きます。明雅屋の感想なので。

 

35㎜径の利点

 一般論としてよく言われているのは重量と剛性に関してでしょうか。

その点を以下にまとめてみました。

  • 重量 

まずよく言われるのが重量面に関して。一般的に太くなると重くなりそうと思われるかもしれませんが、ハンドルは35㎜にすることにより薄く作ることが可能なため、31.8㎜に比べて軽量に仕上げることが考えられます。ただ、ステムのクランプの締め付けに対応するために中央を厚くする必要があるために場合によっては重さが変わらない場合があると思います。

  • 剛性

剛性と強度は直径の4乗で増加するので、明らかに剛性は上がるはずです。

しかし、剛性の増加が自転車の速さに直結するという考えは少し早計かもしれません。

クランクの剛性がペダリングパワーに影響するか否かの実験をみると、市販されている剛性が高いクランクと少ないクランクの差は300ワットで踏んだ時の差は1%以下。もしくはそれのさらに数分の1以下になるという結果が得られたようです。

ハンドルバーとクランクを比較するのは大いに間違っているかもしれませんが、早く走る為の自転車のパーツは剛性が何よりも正義、という考えを否定する材料になるかもしれません。

また、ブレーキやグリップが取り付けられる部分は全て22.2㎜径です。35㎜クランプの場合22.2㎜まで急激にテーパーをつけなければならないので、そこまで剛性を求めるのは難しいかもしれません。

 ※上記の実験は

blog.fairwheelbikes.com

を参照ください。

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Cannondale cujo 27.5+ アルミハードテイル

実走してみての感想

9万円台の完成車についていた31.8㎜径のステムとハンドル(アルミ)から、RACEFACEのRIDEステムとハンドルに変更してトレイルを走ってみました。

 

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ステムの突き出し50㎜ RACEFACE RIDE
  • 平地 登り

剛性はあまり感じないかもしれないという予備知識はありましたが、登坂時のダンシングの際や、平地のダンシングの際にしっかり剛性感を感じました。かなり感度が乏しいワタクシ前田ですが、ブラインドテストをしても判るほどには違いはあります。ペダリングで生じるパワーを対角線上に位置する側の手でしっかりと受け止めている剛性は安心感があります。例えるなら、元手の太い箸を持っているような安心感。

  •  下り

重要な下りの局面においてですが、剛性がポジティブに効いているかは微妙なところ。

ワタクシが今回使用しているのがアルミということも関係しているのかもしれませんが、今までよりはダイレクトに振動を感じます。(比較したハンドルもアルミ)

ポジティブに言い換えれば、サスの挙動を感じやすいや、コーナー時のハンドリングは狙ったところに入りやすい、と言うこともできます。

アルミより減衰性能が高いカーボンバーであれば、このバッキバキに効いたエッジをもう少しマイルドにしてくれるのかもしれません。

結論

つまるところ、多くのライダーが言っているようにハンドルの剛性、撓りには正解がない、ということかもしれません。好みの問題、と言ってしまうと身も蓋もないですが今後31.8㎜径という選択肢がかなり少なくなる、という予測可能な未来を考えると、早めに自分を納得させて35㎜に体をなじませる必要があるかもしれません。

ワタクシにとって、アルミ素材の35㎜は長距離のトレイルライドには少し不向きかもしれませんが、短時間で走るライドであれば自信をもってコーナーリングができますし、狙ったラインに通すのも少しは容易になるのでアリです。バイクの挙動を敏感に感じやすいのでサスペンションのセッティングを確認したいときにも有効なオプションです。

 

やはり、カーボンでの違いをやる必要がありそうですね。

次回、やる気があればやってみます。

 

IRC TANKEN 27.5×2.8

ワタクシが以前とてつもない愛を語ったMICHELIN Wild AMはメジャーチェンジが行われ、遥かに重量化されグリップがマシマシになりWild AM2という当たり障りのないネーミングで帰ってくることが海外サイトを見るとどうやら決定ぽいので、それまでの繋ぎのために、もとい、気になるタイヤであったIRCのTANKENを使ってみました。

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27.5×2.8 空気圧前後輪とも0.9bar

ワタクシが使ったのは前後ともにTANKEN 27.5×2.8。いわゆるプラスサイズのMTBです。

空気圧は前後0.9barと、下限ぎりぎり。

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0.9barのためタイヤによってはコーナーで撚れることもあるけど、TANKENはその点優秀で撚れることなくしっかりとサイドノブが地面をグリップします。

コーナーの途中にある濡れた木の根も滑ることなく通過できたのはその象徴的な出来事。

まぁその分1.1Kgとけっこう重いんですが。

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岩場や、木の根にタイヤのサイドを当ててクリアするような走りをよくするのですが、そういう走りをするにはちょうどいいノブの配置とコンパウンド

もしかすると2.8という幅の恩恵かもしれませんが、、、

タイヤ自体の重量は重いのに、路面抵抗が少なく感じたのはセンターは硬めのコンパウンドなのかなぁ。重いのに転がりは軽いっていうのはIRCらしさ。

これで税込み6,050円なのは誰も文句はないでしょう。

 

あと、重要なのはサイドのロゴ。

これ良いですね、いつもの感じのロゴははっきりいってダサかったので。

あれが嫌でIRC使わなかった人も、これならいけるんじゃないですか?

弊店にも何本か在庫あります。

GL component ハブ E-BIKE

弊店で一番売れているハブかもしれないGLC

今回はE-BIKEの前後ハブに使用しました。

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TREK E-BIKE

 

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135QRが選択肢としてあるのが非常に心強い

リアハブ 20,240円(税込み)

このお客さんは仕事でこのE-BIKEに乗っており、時には一日で100km近い距離を走ることもあるとのこと。
そのため、少しでも足回りをしっかりしたものにしたいというオーダーでGLCのハブでホイールを組むことになりました。

仕事で使用された感想ですが、

「スピードの乗りがとてもよく、巡航がとても楽に出来るようになった」「疲れがまったく違う、今までより格段に疲労が少なくなった」

とのこと。

加速をアシストするE-BIKEでこの違いが分かるのですから、人力で漕ぐ通常のMTBであれば更に違いが分かるとおもいます。

わたくしもGLCハブを使用していますが、惰性時のスピードの出かたは驚かされます。

MTBでのペダリングをしない下りにおいて非常に武器となるハブ。怖いくらい勝手に進みます。

ハブの耐久性、シールドがかなり高いので、メンテナンスの頻度も少なくてすむのも魅力です。よく乗る人で注油は年に1回くらい。優秀ですよね。

 

フロント 11,000円(税込み)

リア   20,240円(税込み)

PEATY'S

PEATY'S

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LINK LUBE ALL WEATHER 60ml ¥1540

たぶん皆さんの方が詳しいでしょうから、語源は端折ります。

MTB界のレジェンドが作ったケミカルはとても興味があります。

今回試したのは、FORMING DERIVETRAIN DEGREASER とLINKLUBE ALL WEATHERの二点。

 

FORMING DERIVETRAIN DEGREASER

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写真のようにスプロケットにディグリーザーを吹き付けて泡立たせ、チェーンを回転させて放置すること数分。あとは水で洗い流すだけでOKという非常に簡単な製品。汚れがきつい場合はブラシでこする場合もありますが、基本簡単。

チェーンを洗う行為は心から嫌いなワタクシですが、これなら簡単なので苦になりません。むしろ、チェーンが綺麗になるので進んで行うまでに私のマインドが成長しております。

ありがとうPEATY'S

 

LINKLUBE ALL WEATHER

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ALL WEATHERと銘打っているからにはウェットコンデションでも使えることを想定してるってことですよね?スプレータイプではなく、こういう液体タイプのチェーンオイルは個人的には信頼感が高い。とにかく持ちがいいという経験から期待感も高まります。

 

off.road.cc

このサイトでのレビューでは、ウェットな場面での信頼は高くないという評価になってますが、自分が試してみなければわからないので雨の日に試してきました。

  •  雨の中のライド

3㎜以上の降水量の日に、舗装路ですが40km程度走ってきた結果、一切オイルが切れることはなく、その状態で数日間は一回1時間程度のトレイルライドでもチェーンのオイル切れを感じることなく走ることができました。

先ほどのレビューをしていた方は雨の次の日はチェーンに錆びている場所があったと書いていましたが、注油前にしっかり洗浄してなかったんじゃないでしょうか。FORMING DERIVETRAIN DEGREASER知らないんじゃないですかね。

ワタクシはちゃんと洗浄して注油しているので数日たっても錆びは発生していません。

 

 また別日の雨の中、花脊峠という京都ではそこそこ勾配のある峠を走ってきました。

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雹まじりの雨が吹きつける、花脊峠の頂上

店から山頂までの往復で40kmほど。うってつけなことにずっと雨であり、山頂は雹がたたきつけるコンデション。

雨の中、常に高トルクがかかった状態というチェーンにはストレスのかかる場面ですが、オイル切れを感じることはありません。

その日は40kmで終了しましたが、再注油せずに数日間ノンストレスで走ることができそうです。

 

ワタクシの場合、週6日トレイルライドをしていますが、ウェットコンデションでない場合なら1週間以上オイル切れにならずに走ることができています。

ワコーズのパワーを数年使っていますが、同等かそれ以上に耐久力はあります。

 

  • 結論

大雨の中の長距離レース(たとえば王滝120km)の場合だと、ワコーズであればEXTREME、FINISHELINEであればグリーンの方が最適なのは経験的に分かります、がドライブトレインが壊滅的に汚れてしまうことを考えると日常的な使用であればPEATYSのLINKLUBE ALL WEATHERはちょうどいいのではないかと思います。

はっきり言って、あの汚れは最悪です。

なにしろドライブトレインが汚れないので。

 

一部のレビューにあるような、雨の日での脆弱性は感じません。むしろAll Weather とあるようにバッドコンデョンでも効果があると思います。

値段とパフォーマンスを考えると、ワコーズのパワーと同じかちょい上回るかなぁという位置。大きな違いはミントの匂いがする点。そう考えるとPEATYSの方が上ですね。

 

 ストアーズでも販売してます。

meigaya.stores.jp

 

Orange Bikes

Orange P7

レイノルズ525です

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Orange Bikes P7

多くの方が日本でOrange入るの?って方が多いと思いますが、入ります。

これは売れちゃったので、次回日本に入荷は7月頃のようです。

 

サスペンションのセッティング

削足適履

足を削って靴に合わせる。という熟語です。

目先のことにとられて、大事な物事を忘れてしまうことを意味します。

 

サスペンション付きのMTBに乗っていて、タイヤがグリップしなくて怖いという場合。タイヤの空気圧を下げて解決を試みるという場合が多く見受けられます。

その際タイヤの空気圧を確認すると1.0bar以下まで下げていることが多々見受けられ、さらにフォークのサグを見ると30%オーバー。

これだとフォークは正常に機能しないので、タイヤのグリップは得られないのもうなずけます。フォークもタイヤも空気圧がマニュアルよりも大きくそれる結果になっています。フォークの異常に気がつかず、タイヤの空気圧を抜き帳尻を合わそうという行為はまさに削足適履。

とりあえず、サスペンションフォークやリアユニットは金額としても機能としてもMTBに及ぼすウェイトはトップレベルに高いのでマニュアル通りのセッティングにしましょう。

 

今日は、マニュアルどおりに設定しているけど前輪が弾かれて怖いというお客さんのセッティング。

多くの場合フロントは15~20%、リアは25~30%のサグがマニュアルにあると思います。今回のバイクはフロントは20%リアが30%のサグに設定されていました。

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monarch plus rc3

前輪が弾かれるといった場合フロントフォークのサグを少し多めにするという解決方法がよくある解決法だと思いますが、今回のフォークは20%取っているので、それ以上空気圧を抜くことは得策ではないと判断し、マニュアル内で収まるようにリアショックを加圧し25%(monarch plus rc3の場合20~30%がマニュアル)までサグを減らしました。

ご存知のように、前輪に加重がうまくかけられない場合、フロントが弾かれる場合が多くあります。そのため、今回はリアを加圧し自然に前輪に荷重がかかるようにセッティングしました。前後のサグをマニュアル内に収めて解決するとこのような方法が正解になることもあると思います。

 

ちなみに、セッティングを変えた後、いつも走っているトレイルを走行していただいたのですが、「ビックリするほど安定感があがった」とのことです。

サスペンションのセッティングを全く触ったことがない方は、一度ご確認いただくか、ご相談ください。少しはお役に立てるアドバイスをすることが出来ると思います。